所 在:大阪市浪速区日本橋西1丁目
延床面積:77.01㎡
規 模:地上2階
構 造:木造
用 途:美容室
工事種別:リノベーション
竣 工:2023年6月
設計監理:米田建築アトリエ
共同設計:atelier_suola
施 工:株式会社渋谷工務店
写 真:ToLoLo studio
大阪の繁華街”なんば・心斎橋”エリアにて営まれてきた美容室の移転・改修計画。
敷地はポップカルチャーの聖地”日本橋”に近く、観光で賑わう都心エリアや古くから続く道具屋街の狭間に位置しており、下町の趣が残る落ち着いたエリアであった。
既存の建物は築60年の木造・長屋建築で、東西は隣家、北側は工場に近接して建っており、 南側接道ではあるもの、向かい側の高層マンションにより冬場の採光はほとんど望めそうになかった。
施主は、お客様が落ち着いて過ごすことのできる隠れ家のようなカットスペースを1階に、太陽光を取り入れた明るいプライベートサロンを2階に計画することを望まれていた。
サロンという性質上、明るく心地よい空間であるためには自然光が欠かせない要素の1つとなるが、街に対して開きすぎても落ち着かない空間となってしまう。
この逆説的な条件を叶えるため、道路からの視線を防いでプライバシーを守りながら、どのように自然光を取り入れるかに焦点を当てて計画を進めることにした。
まず我々が着目したのは既存の階段室である。
東側の外壁に沿って3層(1階・2階・小屋裏)をつないでいたストレート階段は、建物を縦方向に貫通するヴォイド(吹抜)空間を生み出していた。
そこで、このヴォイドが建物全体に自然光を届ける光の筒となるよう、上部の屋根に透過性のある材料を用い、南側の壁をすべて窓として仕上げることにした。
階段室は直接光を取り込む明るいアプローチ空間とし、階段室に面して1階・2階ともにサロンスペースを計画した。
それぞれのスペースは南北側に小さな高窓や地窓を設けて街を歩く人々からの視線をさえぎりながら、最低限の採光を確保している。さらに階段室に面して開口を設けることでやわらかな反射光を獲得し、全体がほどよい明るさをもった落ち着きのある空間となるよう配慮した。
今回の計画では、階段室を中と外のバッファーゾーンと捉えて街や自然との距離感を調整することで、開きすぎず閉じすぎない、双方のあわいに位置する空間を作り出そうと試みた。
季節や天気、時間帯によって常に明るさや色味が変化する光の筒により、空間にうつろいをもたらし、やわらかくゆらぎのあるサロンとなることを目指した。